本日10日は、9月のふれあいブックカフェの日でした。まだまだ暑さが厳しくて出席者が少なくお当番を含め4名での開催となりました。とてもこじんまりした集まりではありましたが膝すり合わせの活発な話し合いになりました。
紹介された本は以下の4冊でした。
①後藤正治 「ベラ・チャスラフスカ 最も美しく」 文藝春秋 2004年
ベラ・チャスラフスカ(1941〜2016)は、1964年東京オリンピックで金メダルに輝き、その活躍に日本中が熱気に沸いたのを記憶している方も大勢いらっしゃると思います。チェコスロバキアの政情や身内の不幸な出来事に翻弄され、精神を病みつつも果敢に生き、2011年東北大震災のときには支援のため訪日もしました。本書は2004年に著者がプラハに行き情報を収集して上梓されたが、残念なことに本人は入院中で会えなかったそうです。世界では様々な紛争に巻き込まれて尚、正義を貫き活動し続けているアスリートが多く存在する。その精神の高さ、強さにどれだけ多くの人々が励まされることか!
②山口未桜 「禁忌の子」 東京創元社 2024年
2025年本屋大賞にノミネートされた話題作。体外受精をめぐる医療ミステリーで、今日的な課題を提供しているのは医師である作者ならではないだろうか。どんな話題を提供しているのか、ミステリーなのでここでは明かせません。内容は読んでのお楽しみに!
③プレディみかこ 「私労働小説 ザ・シット・ジョブ」 2023年 KADOKAWA
著者は、以前このふれあいブックカフェの読書会で取り上げた「僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の作者。三苫薫が所属するサッカーチームのあるブライトン、労働者階級が住む地域にあえて居を構えています。シット・ジョブとは、作者曰く「くそみたいに報われない仕事」という意味。店員、作業員、配達員にケアワーカーなどの「当事者」が自分たちの仕事を自虐的に指す言葉だそうです。「底辺託児所」の保育士であった著者が、他者のケアを担う者ほど低く扱われる現代社会への批判を込めて問題提起をします。うなずきと怒りの気持ちが交錯しそうな著書のように思われます。読んでみたくなりました!
④松田邦紀 「ウクライナ戦争と外交」 時事通信社 2024年
本書は、今現に起きている戦争の現場からほぼほぼ現在進行形で、書かれたウクライナ大使を辞して3か月という時期に出された本です。現状を一刻も早く伝えることは自分の務めであるとの信念で書き下ろした、湯気の立つような現場の話が満載。毎日のように報道される現状をありのままに知るために大変貴重な本と言えます。戦地に当時日本の首相であった岸田総理をいかにして訪問にこぎつけさせたか、その裏話や空襲警報の中大使館の任務をどう果たしてきたかなど、まさに現代版戦場を見る感じがします。「特に気になるのは、侵略国ロシアと被侵略国ウクライナを同列に扱って、どちらも悪い、或いは、どちらの側にも言い分があるといって、ことの本質を相対化する論理である」と著者は世論の在り様を危惧しています。SNSから出される情報を私たちはどのように受け止めるか、ことの本質を見失わない不断の努力が求められていると肝に銘じました!
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